Teacher'sPet-先生のお気に入り-

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氷室編しかない

先生のお気に入り(氷室編)

吹奏楽部その1

入学式が終わってからすぐの日曜日、はさっそく女の子の友達、藤井奈津美と紺野珠美と遊びに森林公園の公園通りに出掛けていた。
遊ぶ所は少ないかもしれないが、雑多な繁華街よりこちらの方が好きだ。
まだ引っ越したばかりで、街のことは知らないことだらけだが、森林公園は大好きだ。毎週末訪れてボーっとしていたい。
 
「志穂〜! こっちこっち」
三人で公園のベンチで買ってきたファーストフードをパクついていると、背が高くスマートで、顔色の悪いメガネの女の子がやってきた。
「奈津美、私これから塾なのよ。呼び出したりして何?」
「あんたさぁ、塾って、入学式やったばっかだよ?! ほら、こないだ言ってたよそ組の女の子。紹介しようと思って」
「あ、です。宜しく」
「有沢志穂です。宜しく」

女三人よればかしましい、なんて言葉もあるように、お互いの自己紹介から始まって会話が弾んだ。一番話したがらそうな有沢さんも適当には
会話に混ざってくれている。そして、自然と部活やバイトの話になった。も、ある程度学校に慣れたらバイトを始めようと思っている。
でないと洋服も買えそうにない。
 
藤井はチア部に入部、ハンバーガーショップでバイトをする予定だという。紺野は女子男子両方のバスケ部のマネージャーをやるという。中等部から決めていたそうだ。

有沢はガリ勉少女ひとすじかと思いきや、花屋のバイトを申し込んできたそうだ。自分も含めて、みんなある程度の予定は決めているようだ。
そして、が吹奏楽部に入部届を出してきた話をすると。
「すごいねー、朝から夜までヒムロッチじゃん」
「え??」
「たしかアイツ、吹奏楽部の顧問だよ」
「そうなんだ・・・」
紺野がおっとりした口調で、
「なんか気が休まる時がなさそうだねぇ」
「でも、いんじゃない。氷室先生は厳しいけど教え方もうまいわよ。勉強だって見てもらえるわ」
奈津美が、苦虫を噛み潰したような表情で、
「うへ〜、朝から晩までヒムロッチ〜、ご愁傷様」
(そうか、氷室先生が顧問なのか、でもなあ、トランペットで入学しておいて吹奏楽部に入部しない訳にも・・・)
一年生の部活動は明日から、は不安でいっぱいになった。



入学してから最初の日曜を挟んでの一週間が始まった。一年生の部活動も始まり本格的な学園生活のスタートだ。
放課後、は自前のトランペットを持参して音楽室に入った。
(うわぁ、、、)

新入部員がこんなにいるのか、それも女子生徒ばかり30人近くはいる。みんな吹奏楽を楽しむというより、氷室目当てのようだ。
中学校から楽器をやっていたというのは、を含め数人しかいない。そもそも楽器を持っていない生徒ばかりだ。

先輩部員が練習をしているのに、生徒たちは雑談に余念がない。演奏を目的として入部したものは、練習をしたり楽器の手入れをしていると、氷室が入ってきた。
「静かにしなさい!」
氷室が一喝して壇上に立った。ざわざわした会話と楽器の音色が消えて音楽室は静まりかえった。
「私が顧問の氷室だ。吹奏楽は調和が大事である。規律を乱す者、また、学業と両立できない者は今すぐに立ち去ってもらう」
(うわぁ、授業の時よりさらに厳しい口調・・・)
「見た所、何らかの楽器の経験者が少ないように思うが、君たちは本当にやる気があるのだろうか?」
手ぶらの女子生徒たちが気まずそうに、周りの友人達と目配せしている。

「我が吹奏楽部は初心者でも構わない、ただ、これから吹奏楽をやろうという者が、何故、先輩部員の練習を聴いたり、楽器に接触しようとしない?! 君たちには演奏をやってみようという気概が感じられない」
「あと、補習を受けた者、何があろうと第三日曜日の練習会をサボタージュした者は即刻退部してもらう。例外は事故、弔辞のみ。その際も証明になるものを提出してもらう」

氷室が新入部員を一瞥する、そして、と眼が合った。
・・・たしか、彼女は、演奏が秀でているとゆう事で理事長が特待生として入学させたのだったな・・・)
は蛇に睨まれた獲物のように、トランペットを握りしめながら氷室を見つめている。要は固まっているだけなのだが。
(何を怯えている・・・まったく)
「コホン、以上。放課後の雑談をしにきた者、覚悟のない者、学業と両立をする自信のない者はやる気のある者の調和を乱す。
入部を認めるわけにはいかない、さっさと音楽室から退去すること!!」
(学業と両立!!!! どうしよう〜!!)
そもそもはば学は、市内では、一番学力レベルが高い。県内でもベスト3に入る位のハイレベル校である。公立出身のが追いつける訳がない。
塾なり家庭教師なりとできればよいが、そんな経済的余裕は家にはない。

氷室の本気の一括で、3分の2以上の女子生徒が音楽室を去って行った。残ったのはを入れて8人。半分は男子である、男子生徒いたんだ。


経験者が残ったということで、部活動の説明、今後の予定等の説明、先輩らの自己紹介はスムーズに終わった。10月末には高校生吹奏楽の甲子園といわれる全国吹奏楽コンクールに向けて夏合宿があるという。
こんな状況でバイトなどできるのだろうか、弟の尽は小学生だし、少しでも働いて家計を助けたいのだが。
「以上、では楽器パートの振り分けと・・・・・」
部員に楽譜が渡される。アレンジも氷室がしているらしい。”作曲:ラヴェル 編曲:氷室零一””ピアノ協奏曲第1楽章”
(どうしよう、知らない、、、)
「なお、今年の課題曲が発表されたら速やかにそちらの練習に移行する・・・・・・・」
 
全体練習の前に個人練習をする。概ね個人練習は本人にまかせる主義だが、一年生の場合ある程度指針が必要だ。
新入部員一人ずつに、指導をしてゆく。
「あの?、氷室先生・・・」
「どうした、君はまだ音も鳴らしていないようだが?」
「その、課題曲なんですが、私のパートだけでもいいんで、CDをかけて頂くか、演奏して頂けませんか・・・?」
「何故だ?」
「私、その、、、、楽譜が、読めないんです・・・・・」
一瞬の間があった、氷室とは熱い眼差しでお互いを見つめていた。穴が開くほど見つめられてはドキドキした。

氷室は単に呆気に取られて、硬直していただけだが。
「何ぃ〜!?!?!?」
氷室の声が裏返っていた。