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氷室編しかない

先生のお気に入り(氷室編)

夏休みの終わり



8月の最後の日曜日、吹奏楽部の練習、氷室の個人授業から開放される休日。
は、家事を早めに終わらせて森林公園に出掛けることにした。

今日はフリーマーケットの日だ。
バイト禁止、小遣いもわずかな彼女にとって、年頃の女子が着るような衣類を格安で買える。

特に夏場の終わりは、会場も賑わったりする。
今まで貯めた小遣いを握り締め、(レベルに付いていくだけの勉強と部活と家事で小遣いを使う暇もなかったからだが)
は、森林公園方面へ徒歩で向かった。

色々と回って、ボトムやトップス、シーズンオフのコートやらセーター、時期が終了するワンピースや水着も購入できたのはラッキーだった。
小遣いの全てをはたいて、満足した彼女は、空腹に顔をしかめる。

「うわ、もうこんな時間、、、ランチするお金もないし。。。帰ろう」

フリマ会場を移動していると、シルバーアクセサリーの露天があった。が、そこだけポツンとしていて、まるで人が集まっていない。
売りに出している人物は、チューリップハットを目深に被り、声を上げるでもなく、存在感のないように佇んで座っていた。

こんな売り場あったっけ? そもそもアクセサリーに興味のないは、完全にスルーしていたようだ。

何となく気になってしまったのだろうか・・・
は、その露店の商品を眺めてみた。アクセサリーの質や出来の良さは、には皆目見当もつかないが、
手にとってみると、洗練されたデザインだし、きちんとした仕上がりには関心させられた。
ハンドメイドということもあって、銀だとしたらリーズナブルな値段だ。(でも今の財布残高では買えないが・・・)
純シルバーで、このデザインと値段、なんで売れないのだろうか・・・

「あ・・・・・・」
「葉月くん?! こんなとこで何してんの??」
その店主は、葉月だった。

・・・」
「へえ、葉月くん、フリマで出店してたんだね、全然気付かなかったよ。でも、なんかお金に困ってるとか・・・??」
「いや、俺、いっぱい作り過ぎたから、売ってみようかと思って・・・」
「え、これ、葉月くんの手作りなの?! すごい!」
「そうか・・・」
「うん! シモンで売ってるのより全然いいよ。それに、これ、本当の銀じゃないの?」
「ああ、シルバークレイっていうので作った。ちゃんとした純銀だ」
「それで、なんで、人が来ないのかなぁ?」
「ああ、朝からずっといるんだけど、一個も売れてない・・・」

この炎天下に、かれこれ4時間近くじっとしていられる葉月君はある意味すごいなと、は思った。
このままじゃ、一個も売れないだろう・・・。
売主はモデル美少年だが、売り込みというものを全くやっていないようだし、葉月が顔出しすれば人も集まるだろうが、本人はその気はないようだし。。。

(よしっ!)
「キャ?!! このアクセかわいいっ!!」
「・・・、どうした??」
「えええっ!! こんなにいいものが、こんなに安いの?!! すっご?い!!」
は、できる限りの黄色い声を張り上げて、人々の注目を浴びるようにした。

「なに?」
「ちょっと行ってみようよ」
若い女性を中心に、葉月ブースにあっという間に人だかりができた。

「ホントだ! けっこうイケてるよ」
「でも、全然安いじゃん。あたし、これ買う!」

「毎度ありがとうございます!」
は、テキパキと接客対応した。葉月の方は呆気に取られていた。
その場口コミで、人が人を呼び込み、売り場は大盛況となった。

こうして、葉月のシルバーアクセは、ものの1時間程で完売した。

「・・・すごい・・・全部売れた・・・」
「やったね!」
「ああ、サンキュ。おまえ、すごいな・・・」
「葉月くんの手作りアクセがよかったんだよ。でないと売れないよ」
「そうか? 少しは自身持てた・・・」

露店を片付けて、フリマ事務局で手続きを済ませた。
「それじゃあね」
空腹のは、早く帰路に着いて何か食べたかったので、挨拶もそこそこに退散しようとしたが。

「待てよ。今日はありがとう。。。なんか食ってから帰ろう。俺、奢る」
「ほんと!」
ゴチの誘いを彼女が断るわけはなかった。

帰りがけなので、駅前近くのファミレスに立ち寄る。午後も過ぎていたので、店内はさほど混雑していなかった。
何でも頼んでいいという彼の厚意を真摯に受け止め、は、ハンバーグステーキランチとナポリタン、デザートにフルーツパフェを注文した。
葉月は、彼女の元気のいい食欲に最初は呆然としたが、すぐに微笑ましく彼女を見つめた。
こんなに美味そうに食べてくれると、ごちそうし甲斐もあった。単なるチェーン店のファミレスなのに。

デザート中の他愛ない会話の後、葉月はコーヒーを一口飲み、自分がかけていたシルバーのネックレスを外し、に差し出した。
「これ、やる」
「え、でも、なんで?」
「今日のバイト代。新品やりたかったけど、全部売れたから・・・」
手渡されたペンダントは、シルバーチェーンにターコイズと羽根型の銀細工のペンダントトップだ。
「いいよ、そんな、悪いよ。ここでごちそうになっただけで十分なのに」
「お古で悪いけど、、、貰ってほしい。。。」
「葉月くん・・・ありがとう・・・」
にとって、アクセサリーなどは今の自分には手が出せないものだった。素直に嬉しかった。

帰り際、高台から眺める水平線の夕陽を、二人はしばらく無言で眺めていた。。。